PZT薄膜を用いることで,バルクPZTで実現した円筒型モータを微小化することに成功しました。PZTセラミクス素子を用いたボルト締め構造のたわみ振動子は,たわみ振動を励振するランジュバン型振動子として初めての実用化例となりました。
圧電膜を用いたマイクロモーター

PZT薄膜を用いたマイクロ超音波モーターです。チタン管外周面に水熱合成法によりPZT薄膜を成膜し,周方向に4分割した電極によりたわみ振動を励振しています。
回転軸を円筒内に通し,両端にローターを配置しています。上下2つのローターで円筒状振動子を挟み込み,スプリングにより予圧を加えています。
4本の給電ワイヤーにより振動体を保持するとともに電気的に駆動を行います。

チタン管を共通グランド電位として,4相の交流電圧で円筒のたわみ振動を励振します。2相間で位相を90°ずらして,直交するたわみ振動モードを駆動します。
PZT膜は厚み方向に分極されていて,厚み方向の電界を印加することで,長手方向(円筒の軸方向)に伸縮する振動が励振されます。円筒のたわみ振動となります。

直交する2つのたわみ振動モードが,90°位相差で励振されることで,モードの回転振動が励振されます。このモードを端面で見ると,円周に沿って進行波が励振されたように見えます。
90°位相差を-90°の位相差とすることで,モードの回転運動が逆回りになります。端部で駆動されるロータの回転方向は反転するので,モーターは逆回転となります。
円筒型回転モーター

円筒形の2つの金属ブロックで,2枚の円板状PZT素子を挟み込んだボルト締め構造のランジュバン型振動子です。2枚のPZT素子は厚み方向に対向して分極し,間に駆動電極を設置しています。
円筒形振動子の上下面の振動を使ってローターを駆動します。コイルばねを使って,上下のローターに軸方向の予圧を加えています。
ボルト締め構造の振動子は,縦振動用とねじり振動用が用いられていましたが,3番目の振動子として,たわみ振動子が始めて用いられました。

2つの円筒ブロックは,ボルトを介してPZT素子に軸方向の加圧力を与えています。この構造は,引っ張りに弱い圧電セラミクスを用いて振動を励振するのに適しています。
PZT素子の表面電極(銀焼き付け電極)は,挟み込む金属電極(銅板)に合わせて,周方向に4分割されています。
駆動する交流電源の周波数は,円筒のたわみ振動モードの共振周波数に同調した周波数とすることで,効率よく超音波振動を励振されます。

一眼レフカメラのオートフォーカス用にキヤノンにより実用化された小型超音波モータです。最初に開発された円環型超音波モータに比べ,低コスト化が図られました。
バルクPZT素子を金属ブロックで挟み込むボルト締め構造のランジュバン型振動子としては,初めての実用化例となりました。
この初期型のモデルでは数枚のPZT素子を重ね合わせて用いていますが,のちに開発されたより小型艇コストのモータでは,積層型のPZT素子が用いられました。