超音波振動している固体表面から液中に音波が放射されるとき,非線形作用により直流的な一方向の力を生じます。線形振動を考えると交番力となるので,直流的な力は考えづらいですが。
弾性表面波素子を用いた液中アクチュエーター

弾性表面波素子を水中に付けると,水中への音波の放射が起こります。駆動周波数は9.6MHzです。
左側に写っているのが弾性表面波素子。2組のすだれ状電極が形成されています。下側のパッドの広い方が駆動用電極で,上側の縦に長い方の電極は反射器です。
右絵のように駆動用電極に給電されて,レイリー波が励振されます。。上方のすだれ状電極で反射され,レイリー波は基板表面を下方へと伝搬していきます。

ニオブ酸リチウム(128°Y-X)上を伝搬するレイリー波の伝搬速度はおよそ4000m/s。水中を伝搬する音波の伝搬速度は約1500m/s。
2つの伝搬速度の関係から水中への縦波放射(音波の放射)が起こります。放射角θは,2つの伝搬速度から図に示すような角度となります。
水中への縦波放射により音響放射力が働き,その反力として素子には左方向への推進力を得ます。
水中を動いていく素子を,水槽の横から撮った動画です。すだれ状電極のアルミ薄膜からの光の反射が美しく幻想的な映像です。
移動速度としては毎秒10㎝程度でした。
こちらは動いている様子を上方から撮った動画です。
水槽の底に物差しが置いてあるので移動距離がだいたい分かります。小さいメモリが1㎜で,数字が1cmおき入っています。
円板状素子の厚み振動を用いた液中アクチュエーター

円板状の圧電素子が厚み振動するときも,水中への音波の放射が起きます。圧電振動子の片面を水中に露出し,反対の面を空洞側へ置いています。
水中への放射面と反対側へ移動するので,空洞となる樹脂の先端は尖った形状として,水の抵抗を減らす形としています。
水中でバランス良く浮くように,上部には浮きとなる板を設置しています。これで圧電振動子の音波放射面は水面と垂直に保たれるようにしています。

原理的な話として,無限に長い円形導波路を縦波(長手方向への粗密波)が伝搬(実際にはポアソン比の影響でちょっと….)して,端面で水中へ放射すると,音響放射力が働くこととなります。これは非線形な作用です。
似たような状況を実現する為,円板状の圧電振動子を厚み方向に分極し,厚み方向の電界駆動により,厚み振動を起こします。振動としては,厚み方向の縦波成分が優勢となるので,水中への音波の放射が起きます。
圧電素子の片面を空気(もしくは真空),もう一方を水とすると,それぞれの面に音響放射力が作用しますが,水の方が音響放射力が大きくなるので,圧電素子には左側への推力が生じます。
振動子を圧電素子の厚み共振周波数約1.6MHzで駆動し,動作の様子を撮影した動画です。
弾性表面波素子のアクチュエータと比較すると,こちらの方が幾分速いようです。