オーディオ

オーディオにおける「音質」の問題は,感性に支配された非科学的な扱いを受けてきました。そのため,周波数特性とダイナミックレンジ(雑音と低次高調波歪みに関する問題)が問題を引き起こさなくなった今日,「音質差」は存在すら曖昧になっています。しかし,音に対する違和感が存在する以上,物理的な何かがあるはずです。音質の問題を物理学として扱うには,これまでは議論が及んでいなかった未知の波形歪みを検証し,音質に影響する歪みの存在を実証することが必要です。

音質とは? それは歪のトッピング

よく云うオーディオにおける”音質”の違いとは何でしょうか。単に周波数特性のちょっとしたうねりではなく,定格出力いっぱいに出したときの明らかな波形の潰れでも無く。家庭ならばせいぜい1W程度(或いはもっと小さなパワー)のアンプ出力でガンガン鳴っているときの音です。

音質が異なると云うことは,波形が違っているということ。すなわち,波形が歪んでいるのです。二次歪み? 三次歪み? いえいえ,そんな優しい物では。楽器の発する倍音と二次,三次の高調波を聴き分けられるとでも云うのでしょうか。

例えばバイオリンの音。スピーカーから再生されるバイオリンは,みんなキンキンとした変な音です。慣れてしまって違和感はないのでしょうか。実物の音を思い出してみればすぐに気付くはずです。どんなに高級なオーディオ装置の音も,奇妙に歪んでしまっていることに。奇妙な歪みは確かに存在して,いまや計測可能です。

抵抗で音が変わるなんてあり得ない。  いえいえ….

抵抗で音が変わるなんてあり得ない。そんなの迷信だ。確かに雑音の量は変わる。しかし,雑音と信号は線形独立だ。音になんか影響するはずがない。と,物知り顔に云うでしょう。

確かに熱雑音や電流雑音は音に影響しないでしょう。しかし,抵抗によって音質が変わるとの言い伝えは数多く存在することも確かです。なら,歪みが存在するかどうか,計測方法を研究すればいいはずです。

ついに発見しました。多くの抵抗器は,奇妙な歪みを発生します。音質への影響は大きいでしょう。データーは大事です。どれがいいかは一目瞭然。データが全てとは云いません。なぜならば,計測できていることが全てでは無く,まだ計測対象に上がっていないだけかもしれないのですから。

コンデンサーはどうでしょう

コンデンサーは電源とフィルターとカップリングに入ります。電源はすべての信号電流の源で最重要。ネットワークフィルターは困りもので,もっとも大電流が流れます。

コンデンサーはどうすればいいのでしょう。奇妙な歪みの巣窟みたいになっています。多くの先人たちが,あれはいい,あれは悪い,これをしちゃいけない,様々な言い伝えの意味が少し分かりました。

データーが無ければ音に変化は無い,というのはおかしいですね。どうやって何を測ればいいのか,分かっていなかっただけです。いつだって科学は未完成。感性は,人次第ですかねぇ。まずは先入観を持たず,自らの感性にしたがって,科学的な対応を忘れないことです。ただ,未知の物を計測するのって,雲を掴むような話ですが。奇妙な歪みはここにも存在していました。

ケーブルで音が変わるなんて有るはずが無い。   ことの発端は….

信号を伝えるケーブルで音質が変化する,というのも,これまでの工学的観点からは,奇妙な話です。オームの法則と,せいぜい伝送線路理論が支配する世界ですから。すべて線形です。

しかし,先人からの言い伝えでは,リッツ線は音がいいとか,単線がいい,銀線がいいなどなど。ここでも感性と科学のせめぎ合いですが,まずは先入観を捨てて。(念のためですが,表皮効果は関係ありません。低周波ですから。)

試してみると,確かにごく僅か音がましになることが分かります。何かが変わると云うことは,データで実証されるべき。ということで長い長い旅が始まり,ようやくデータによる違いが認識できるようになった次第です。奇妙な歪みはここにも居ました。

今わかること

抵抗器,コンデンサー,ケーブルでの歪みは僅かです。しかし,回路には多数の抵抗が入り,電源にはコンデンサーが必要で,それなりの数になります。ケーブルは長さが必要です。

少しずつの歪みが積み重なって,独特の音色を作り出しているのが今のオーディオシステムです。有るアマチュア演奏家が言いました。「オーディオの音なんてどれも違和感だらけ。スマートスピーカーで十分。」どうせ別物だから何でも一緒というわけです。

歪み発生要因を吟味することで,音は驚くほど変わります。データに基づいた取り組みで,オーディオを本来の発展する軌道に戻すことが可能です。まだ奇妙な歪みの発現原理は分かりませんが,極力避けることは可能でしょう。

いつまでも試聴実験という再現性の低い方法に頼る必要はありません。個別素子の奇妙な歪みは計測可能なのですから。できる限り奇妙な歪みを排除したオーディオシステムの音は,我々の実験室でだけ試聴可能です。

  株式会社つばめ音響研究所